ロータリ・エンジン

ロータリ・エンジンのしくみを自分の目と手で確かめる。
学んだことを、手を動かし、考えながら確かめること。それがエンジン組み立て実習の目的です。エンジンの構造や工具の使い方、組み立て方など、多くのことを実践的に修得します。
まずはここから。ロータリ・エンジンとは、いったい何だろう?
ロータリ・エンジンとは、燃焼室(ロータ・ハウジング)のなかに三角形のおむすび型の部品(ロータ)を持つエンジンのことをいいます。
ロータリ・エンジンは、構造がシンプルで小型、軽量、静かで高出力であることから200年以上前から、「夢のエンジン」といわれていました。しかし、実際には長時間の使用に耐えることができず、多くの自動車メーカーが注目しながらも実用にたどり着くことがありませんでした。
このエンジンを世界ではじめて自動車用として実用化したのが日本のマツダです。1961年にスタートしたマツダのロータリ・エンジン開発は、非常に苦しい道のりでした。しかし、マツダは開発に成功し、今でもロータリ・エンジンは、同社が世界に誇るエンジンとして進化を続けています。1967年にロータリ第1号となったコスモスポーツから、RX-7、RX-8へと、常に高性能スポーツカー用のエンジンとしてマツダを代表する車種に登載されてきました。2006年からは、水素を燃料とする水素ロータリ・エンジン搭載車が登場しています。
インターミディエイトハウジング?ロータ・ハウジング? それって何のこと?
教科書や資料に紹介されている説明や部品の名前。それぞれの意味や役割を実際に自分の手を動かして確かめるのが実習の目的です。特にロータリ・エンジンは部品点数が少なく、構造が比較的簡単なため、実習の教材には適しています。
実習は約5名を1班として、1班が1基のロータリ・エンジンを使用します。実習では、単なる知識だけでなく、それぞれの位置や組みつけの関係、部品同士の役割を具体的に確かめることができます。例えば「ロータ」という部品がどのような位置にあって、どんなはたらきをするのか、「インターミディエイトハウジング」とはどういう役割を持っているのかなど、組み立ての順序に応じて自分たちの目で確認していきます。
また、エンジンそのものの知識だけでなく、整備を行ううえでの注意事項や道具の使い方についても、実践的に体験・修得していきます。
ロータリのほかにも、エンジンの分解・組み立て実習も経験。
ロータリ・エンジン以外にも、AUTでは2年間の学びのなかでガソリンエンジン、ジーゼルエンジンそれぞれの組み立て実習を行います。特にジーゼルの実習では、分解したエンジンを組み立て、再びエンジンを始動させるため、さらに精度の高い作業を必要とします。教科書や講義を聞いて理解するだけでなく、実際に手を動かし、部品の一つひとつを確認し、比較しながら構造の違いを学ぶことで、自動車の知識・技術がより深くなるのです。
各部の名称や役割は事前の授業で確認!
ロータリ・エンジンの構造に関する基礎知識は、実習がはじまる前に授業で勉強済み・・・。のはずですが、そうはカンタンに進まないものです。
その日の実習で組み立てるところまでの部品や構造、手順をもう一度チェックしてから作業を開始します。作業中も先生が絶えず質問に応じてくれるのも大切なポイント。実習には、3人の先生がついて、拡販の進み具合や必要に応じたサポートをしています。難しい部分や特殊な工具の使い方など、きめ細やかに指導します。わからないままに進めては正しい知識や経験が身につきません。疑問や質問はその場ですべて解決します。

ロータリ・エンジンの組み立て

- ここからスタート。左に写っているのが、インターミディエイトハウジング(仕切)。右はロータ・ハウジング(燃焼室)。
- ハウジングをセットする。間にゴミやホコリが挟まらないように注意!
- ハウジングを観察。周囲の丸い穴はボルト穴で、そのほかは冷却水が循環する通路。
- ロータにシール(密閉用の小部品)類をセット。細かく方向や位置が決められている緻密な作業。
- エキセントリックシャフトとの位置(入る場所は決まっている)をあわせながらロータをセットする。

- シールの固定と細部のチェック。手を抜くとトラブルにつながりかねないので、確実に。
- サイドハウジングと呼ばれるフタをセットすると、エンジンの密閉部分がほとんど完成。こちらがエンジン前方となる。
- フライホイールが装着される。作業がここまで来ると、あとはロータリもレシプロも大きな違いはなくなる。
- 先生のアドバイスを受けながら、さまざまな補機類を装着します。
- 燃料、空気、電気を供給する部品を取りつけて完成!ここまでを3回の実習で行いました。
受講した学生のコメント

実際にエンジンに触れてみると、事前の講義でつかんでいたイメージとの差に驚きます。手にする部品の重さや動作の滑らかさ、組み立てに必要なチェック項目の多さなど、実習の場でないとわからないことはたくさんあります。スムーズに作業を行うためには、同じ班のメンバーと声を掛け合うことが重要で、講義で学んだことを手を動かしながら、口にだすことでお互いに理解を深めます。